2014年10月17日金曜日

第2回「あいのり」実施と補助金支給のご報告

前回6月に実施した「あいのり」が、参加者からも、受入先のボランティア団体「一般社団法人チーム王冠」からも好評だったことから、第2弾を実施しました。
   ※ご参考:第1回あいのりの記事
   http://tohoku-hot-project.blogspot.jp/2014_07_01_archive.html


10/10(金) 23:30  新宿を出発
 


活動日 : 10/11(土)・12(日)の2日間、
参加者 : 6名(うち3名は、東北ほっとプロジェクトメンバー)

 
◆東北ほっとプロジェクトから、参加者に支援金を支給
 
これまで、当プロジェクトは、「被災された皆さんのためになる」と判断したことについて、皆様にご寄付を呼びかけ、使わせていただいてまいりました。
それが震災1年目のストーブや、2年目の暖房器具や寝具などであり、また縁のあった地域や仮設住宅のイベントへの物資提供などでした。

復興が少しずつ進んではいるものの、完全復旧には程遠い状況で暮らしている方が多いのが現実です。ではその方々に何ができるのかを、メンバーでずっと考えてきましたが、もうだいぶ前から、やはり「人手、マンパワー」であるとの認識は一致していました。

そこで、少しでも被災地にボランティアが増えれば、、との考えから、当プロジェクトが実施する「あいのり」参加者への支援金の支給を決定しました。
金額は、1回の参加につき、社会人3,000円、学生5,000円です。
 (通常、首都圏-石巻の往復交通費や現地活動費などで、最低でも12,000円ほどかかります。)

※ この支援金の支給対象は、当プロジェクトのメンバー3名は含みません。

 これまでにご寄付をくださった皆様には、ご理解いただけましたら幸いです。もちろん、過去の活動同様、会計報告をしてまいります。


◆今回の費用について
今回は当プロジェクト以外の参加者は3名でしたので、
3,000円×3名分=9,000円 を、支援金として支出します。(各人からの領収証取りつけ済)

【 ご参考 :今回のあいのりにかかった費用(往復) 】
あいのり参加者で費用分担するのは、「往復の交通費」、「ガソリン代」、「レンタカー代」です。
    ※この他にかかる、現地活動費は別途各人が負担します。

首都高速料金         1,440円
東北道・三陸道高速料金 12,420円
ガソリン代           17,000円       
レンタカー代         25,000円
-------------------------------------------------
合計               55,860円

●東北ほっとのメンバーの、1人あたりの負担額
   55,860円 ÷ 参加人数6人= 9,310円
●あいのり参加者の、1人あたりの負担額
   9,310円-支援金3,000円= 6,310円

※ 使用する車(レンタカーかマイカー)などによって、実金額は毎回変わります。
 
 
◆あいのり参加者の活動内容
・在宅被災者の住宅の状況調査
  (公的な住宅支援制度が出尽くした中で、制度の利用状況や
   家屋修繕状況を含む生活実態など)
・女川地区のホヤ養殖手伝い
・お茶っこバス
・倉庫整理


◆今後について
震災直後は、高速道路の料金無料化の制度もありましたし、知人や見知らぬ者同士で車に乗り合って被災地に行くことは珍しくありませんでした。しかし震災から3年半以上も経ち、公的な支援もない中で、あらためて「あいのり」を始め、試行錯誤しています。
今のところ、年に数回実施できれば、と考えています。

応援してくださる方からのご寄付を支援金として使わせていただく以上、参加者が被災地での活動に安全に力を発揮できるよう、事務局としても工夫を重ね、実施してまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
 

「あいのり」担当 : 杉崎 庸子




女川地区でのホヤの養殖
クレーンの先に下がっているのは、ホヤの卵(?)が付いた牡蠣の殻の束。
大きく育てるために、一つずつ外して、間隔をあけて太いロープに留めて行きます。

当プロジェクト会長 笠原氏


 

2014年10月5日日曜日

コミュニティー支援とお茶っこバス


東日本大震災の大津波が東北地方沿岸部を根こそぎ破壊してから3年7ケ月が過ぎようとしています。「もう」なのか「まだ」なのかはそれぞれですが、内容は変われど、各地でボランティアによる支援活動はまだ続いています。
ここで、この2年8か月くらい継続的に私が携わってきた「お茶っこバス」についてまとめておこうと思います。

我々、東北ほっとプロジェクトのメンバーは、宮城県石巻市に本拠地を置く一般社団法人チーム王冠(以下「チーム王冠」)と連携して支援活動を続けています(というより、チーム王冠のボランティア活動を通じて知り合ったメンバーで立ち上げたのが東北ほっとプロジェクトです)。
チーム王冠は自宅と借上げ仮設に住んでいる被災者をメインに支援活動している異色のボランティア団体です。自宅に住んでいる世帯ということはつまり、震災直後には避難所に行けず(行かず)に自宅にいる方々、また応急仮設住宅の建設や入居が進んでいても自宅にいる方々という意味です。
借上げ仮設(みなし仮設ともいいます)とは民間の賃貸物件(アパートなど)を仮設住宅の代わりに使用することをいいます。

「自宅」「借上げ仮設」に共通しているのは、一見して被災者が住んでいると判断できない点です。
仮設住宅と聞いてまず思い浮かぶプレハブ構造の住居は、当然、東日本大震災で家を失った人たちが住んでいるわけですから、仮設に住んでいる=被災者と考えてほぼ間違いありません。しかし被災者であっても自宅や一般のアパートに住んでいると、”非”被災者と見た目で区別ができないという点が最大の特徴です。このために物資やサービスなど様々な支援が受けられなかったりします。そもそも行政でさえ仮設住宅以外に住んでいる被災者の実態を把握できていません。
チーム王冠はこういった「支援の網」から取りこぼされた人たちをメインに支援活動を続けている団体です。



<お茶っこ>
さて、チーム王冠が取り組んでいるプロジェクトの一つに「お茶っこバス」があります。これはソファーなどを組み入れて内装を改造したバス(サロンバス)を希望の場所に出張させて、コミュニティーの交流の場と機会を提供する活動です。お茶っこ=井戸端会議と考えて差支えないと思います。

仮設住宅の団地には、住民が気軽に使える集会場が設置されているところも多く、日中、気軽にお茶飲み話ができるようになっているようですが、津波が住宅を破壊し、空地の目立つ地域にはそんな場所はなかなかありません。
一部のボランティア団体が、町中に常設のお茶っこスペースを設け運営しているケースはありますが、利用者は自力で訪れる必要があり、足腰の不自由なお年寄りにはなかなか利用しづらいようです。また予算などの問題で閉鎖してしまうこともよくあるようです。

お茶っこバス最大の特徴は「出張型」であるという点です。希望の場所にバスを出張させれば、どこでもお茶っこができます。平均すると1回に5~10人がバスに乗り込み、お茶とお茶菓子を囲んで、日常会話に花を咲かせます。

参加者同士の会話を聞いていると、「ひさしぶりね~」とか「最近どうしてたか気になってたんだ」とかいった会話もよく出てきます。近所に住んでいても、日常的に顔を合わせる機会が少ない人は珍しくないようです。またお茶っこバスで初めて知り合った人たちもいます。

コミュニティー(横のつながり)の大切さは震災後、メディア等でもよく言われていましたが、空き地が目立つ土地だとコミュニティーも崩壊していることがよくあります。また前述の借上げ仮設で顕著なのが、全く知らない土地の借家に移り住む方々で、隣人との交流が全くない場合もあります。
こういったケースではコミュニティーを再生するといっても容易ではありませんし、まず旗振り役が必要です。自然発生的に地域の交流が活発になることは難しいので、「お茶っこやるから集まって」と声を掛ける人と、きっかけが必要になります。
チーム王冠のお茶っこバスは、地域交流の再生・維持・発展の一助になっているイベントだと言えます。



<うたっこ>
お茶っこバスを続けているうちに派生したイベントにカラオケ大会があります。
ある地区で何度目かのお茶っこバスを行ったとき、参加者(女性、70歳代)がこう漏らしました。
「昔(震災前)はここにも老人会があって定期的にカラオケ大会をやっていたの。でも震災で亡くなったり土地を離れる人が多くて、老人会も自然消滅してしまった。それ以来一回もカラオケやっていない。またやりたいね。」
別の場所で参加した女性(80歳代)も、震災前は車でカラオケボックスに通っていたそうですが、そのカラオケボックスが津波で壊されたため、カラオケができなくなったと話してくれました。

機会あるたびに聞いてみたところ、想像以上にカラオケのニーズがあることが分かりました。
しかしバスにはカラオケ設備が無かったので、前述の、老人会でカラオケをやっていたところに出張した時、車内にノートパソコンを持ち込んで即席カラオケを試みました。音源はyoutubeに求めました。
およそカラオケとは言い難い設備でしたが、参加者からは次々とリクエストが出てきました。マイクを持たないと雰囲気が出ないと、そこにあった割りばしを握って歌う方もいました。意外だったのは、普段バスの中でも無口なおじいちゃんが積極的に歌い始めたことです。きっと老人会のカラオケ大会でも常連だったのでしょう。

これをきっかけにバスに本格的なカラオケ設備が導入されました。マイクもあればエコーもかかります。このカラオケは各地でとても好評です。
前述の無口なおじいちゃんは、次からリクエストカードと自前の歌詞カード持参になりました。



<お湯っこ>
お茶っこバスから派生したもう一つのイベントは、チーム王冠が主催するお湯っこバス(温泉ツアー)です。
借上げ仮設居住者には慣れない初めての土地で生活されている方がいます。旧知の友達も離れ離れで普段は孤立状態です。そこで、住む場所はバラバラでも同じような境遇の方複数に声を掛けて日帰り温泉に誘いました。初対面の人を含めた同性同士5~6名の少人数で、少し離れた日帰り温泉施設へ行きます。目的は新しい人間関係(友達付き合い)の構築と発展です。

道中はバスの中で歓談してもらい、途中、道の駅で買い物したりもします。昼食も食べながら、温泉と身の上話などですごします。
初対面の方もいるので最初は他人行儀な雰囲気も、時間と供に打ち解けてきます。同様に辛い経験をした者同士、被災したときの話(かなり壮絶です)から始まり、今の生活についてや行政の不満などが出てきます。そして回を重ねると将来的な話が含まれるようになります。

チーム王冠代表いわく、「お湯っこバスは(被災者同士の)新しい横のつながりを作り出すことのできる(今のところ)唯一の方策」だそうです。
また、「最初は被災した時の話が主だとしても、時間の経過とともに現在から将来へと話題が移っていくことは、いずれもグループでも共通」なのだそうです。



<継続したい異色の取り組み>
お茶っこにせよお湯っこにせよ、ボランティアがそこまでサービスする必要があるのか、という感想を持つ方もいると思います。
自助と共助が先ではないのかと言われればそれはその通りですが、東日本大震災から3年7ケ月がすぎた今日、自分だけではどうにもならず、助けを求める隣人や友人を持たない人が少なからずいることは、知っておくべきだと思います。
被災地と一口に言っても広大な土地です。被災者の数も未曾有です。すでに新しい家を建てた人もいれば、一方で、壊れかけた家を直せずに住み続ける人もいます。震災直後より、現在のほうがよほど困窮だという人もいます。差は広がる一方に見えます。

最近のお湯っこに参加された被災者が、こうつぶやきました。
「私達は(東日本大震災で)それぞれに大変な思いをしたけれど、命が助かっただけありがたいと思わないとね。」
これは間違いなく本心ですが、その裏側に「そうとでも思わないとやっていられない」という本音が隠れていると思いました。
被災直後は毎日「その日を生きる」ことで精いっぱいだったし、まわりも同様に被災者だったから、不便も空腹も我慢できたかもしれません。しかし現在は、少しのストレスが日々心身を傷め、それがいつまで続くか分からない不安との戦いです。自分だけ取り残されている錯覚をおぼえることもあるでしょう。例えるなら、短距離走からゴールの見えないマラソンに変わっています。「命があるだけでも・・・」はそんな日常の悲鳴に聞こえるのです。

取り残された被災者が顔をあげて前に向かって歩けるように、津波にさらわれたコミュニティーのつながりが再生するように、現場にニーズがある以上、ぜひ継続したい取り組みです。

チーム王冠の常駐スタッフは、今日も石巻市を中心に行政が把握していない被災者をフォローし続けています。彼らがいないと私達の活動もスムーズに行えません。改めてチーム王冠の献身的な活動に感謝します。


文責 杉崎順一