2013年6月23日日曜日

レポート:被災地のいま 「コミュニティーの再生」

東北沿岸部の被災地では、大震災・大津波発生から2年3か月が過ぎました。
自分が地元(神奈川県)で「被災地に行ってきた」と話すと、「被災地は今どうなってるの?」とよく聞かれます。これには行間に「もう元通りになったところも多いでしょ」といったニュアンスが含まれています。実際、普段接する報道で被災地の「今」に関する情報は少なく、「元通り」といった思い込みを惹起しているのではないかと想像します。

そこで、このブログを通じて少しでも被災地の「今」を知ってもらえればと考える次第です。とは言っても、被災地に足を運ぶのは月1~2回くらいですし、滞在も短時間です。また様々な場所に足を運んで「見物」することはできません(目的はあくまでボランティア)。したがって自分の見た(聞いた)ごく狭い範囲の話であることをまず断っておく必要があります。また見たこと、聞いたことでもブログに書くべきでない事柄もあるので(被災者の個人的な事柄など)、承知してください。


<みなし仮設・借上げ仮設住宅の存在>
連携するボランティア団体(社)チーム王冠は、震災直後から在宅避難者を主な対象に支援活動を継続してきましたが、最近はみなし仮設住宅、借上げ仮設住宅に住む被災者も支援対象に含まれています。これはみなし仮設が、応急仮設住宅と在宅避難者の間で見過ごされがちである現状に気付かされたからです。
見過ごされる理由は過去のブログ記事に譲りますが、あてがわれたみなし仮設が住み慣れた土地から遠く離れていたり、隣人が被災者でない場合もあって、なかなか地域のコミュニティーとの交流が図れず、隣人の知らないうちに孤立しているケースが少なくありません。

※みなし仮設住宅・借上げ仮設住宅:  本来は応急仮設住宅(震災後に設置された仮設住宅団地)に住むべき、自宅を失った被災者が暮らす民間の賃貸住宅(アパートなど)。家賃を国や地方自治体が負担する。応急仮設住宅の不足から活用されている制度で非被災地を含め広範囲に点在する。
応急仮設と違って一見して被災者が住むとはわからず、各支援対象から漏れがち。また通常の賃貸借契約が結ばれるため、契約を更新できず退去を余儀なくされる場合もある(2年が経ち更新時期が間近の住宅も多い)。



<コミュニティーの効用>
地域コミュニティーの重要性は被災直後から言われてきましたが、今でもその重要性は変わりません。
私が見た中で比較的成功しているように見える地区(石巻市内)では、津波による浸水が1階天井まで届くような壊滅的な被害を受けましたが、直後から近隣住民が助け合いながらそれぞれの家で生活し、壊れた家を修繕し、生活を立て直してきました。特徴的なのは各家庭の庭がとてもきれいに整備されていることです。住民は積極的に協力して庭をきれいにしてきました。
家人プラス隣人にボランティアが加わって屋外で作業することで、自然と交流が生まれます。庭仕事をしながら会話が進み、お茶の時間に各々の被災体験を共有します。今現在困っていること、手を貸せば解決できることがわかってきます。
また最近では仮設住宅から自宅に戻って生活を再開する人もいますが、共同作業やお茶飲み話を通じて、自宅で生活してきた大変さ、仮設住まいならではの苦労をお互いが理解し、「お互い大変だったわね」と言い合いながら相互理解と新たな交流が広がっています。
もちろんこれだけで問題が解決できるわけでありませんが、被災地におけるコミュニティーの重要性を再確認できるケースと言えましょう。


<ボランティアだからできること>
私達は物的な支援はもちろん、地域コミュニティーの再生(構築)も重要なテーマであると考えます。例えば「お茶っこバス」によるコミュニティー支援はその一環です。お茶っこバスの井戸端会議やカラオケ大会を通じて自宅住まいの人、借上げ仮設の人、さらには応急仮設の人が知り合い、「ご近所付き合い」が生まれる(深まる)きっかけになれば一歩前進です。
願わくばお互いが持つ誤解が解け、震災後の新しいコミュニティーが構築できればうれしいです。

今は再生の過程です。耕さない畑が固まり荒れるかのごとく、ほっておけばコミュニティー再生の道のりは険しくなります。被災者同士、ご近所同士では話しにくいことも、もしかしたら遠くから来たボランティアなら気楽に話せるかもしれません。
「ボランティアだからできること」はまだあると信じ、活動を続けていきます。

※お茶っこバス: 石巻市の協力を受け、(社)チーム王冠が進めるコミュニティー支援活動のひとつ。サロンバスを出張させ、お茶飲み話の場所提供、カラオケ大会などを通じ、地域コミュニティーの再生をサポートする。

記:杉崎順一

今も残る「日赤病院 出産 SOS」の文字。
震災の時、上空のヘリコプターに訴えた。牡鹿半島にて。